公開 2026.10.11 / 更新 2026.10.11 / 文: 中西 輝(SATORI PARTNERS 代表)
SUMMARY ── この記事の要点
- ◆不動産会社の二重管理は、同じ物件の情報が業務ごとの表に分かれて書き写されることで起きる。
- ◆解決の基本は、物件・部屋・案件を一か所の「台帳」に一度だけ登録し、決済や重要事項調査などの記録は台帳の物件を選んで紐づける形に変えること。
- ◆いきなり全部を移す必要はなく、困っている表ひとつから台帳につなげ、使いながら広げるのが失敗しにくい。
01二重管理は、なぜ起きるのか
不動産会社の業務は、仕入・販売・決済・重要事項調査・印紙・DMなど、ひとつの物件に対していくつもの手続きが並行して進みます。手続きごとに担当者や時期が違うため、表計算ソフトの表も業務ごとに作られていくのが自然な流れです。
その結果、同じ物件の名前・部屋番号・決済日が、決済の進捗表にも、重要事項調査の依頼表にも、DMの管理表にも書かれることになります。表が増えるほど、書き写しの手間と、表ごとの食い違いが増えていきます。
02二重管理で起きやすい困りごと
- ・物件が変わるたびに、複数の表へ同じ内容を書き写している
- ・「5-62」と「5--62」、全角と半角など、表ごとに書き方が少しずつ違い、検索で見つからない
- ・どの表が最新なのかが分からず、結局は担当者に口頭で確かめている
- ・決済日を変えたのに、別の表は古い日付のままになっている
- ・担当者が休んだり辞めたりすると、その人の表の読み方が分からなくなる
03解決の考え方:物件の「台帳」をひとつにする
二重管理をなくす基本は、物件の情報の出どころを一か所にすることです。物件(建物)・部屋・案件を「台帳」に一度だけ登録し、決済・重要事項調査・印紙・DMなどの各業務の記録は、物件名を文字で書くのではなく、台帳の物件を選んで紐づけます。
こうすると、物件名や部屋番号を書き写す作業そのものがなくなります。書き写しがないので、表記の食い違いも起きません。決済日を変えれば、その案件を見ているすべての画面に反映されます。
大事なのは、元の表に書かれていた表記を無理に直さないことです。現場の方が見慣れた書き方はそのまま表示し、書き方の違いは検索や照合のときだけ吸収するようにすると、移行後も違和感なく使えます。
04進め方:困っている表ひとつから
STEP 1
今ある表を並べて見る
業務ごとの表を並べ、同じ物件や案件がどの表とどの表に書かれているかを洗い出します。
STEP 2
台帳に載せる項目を決める
物件・部屋・案件など、複数の表に共通して出てくる情報を台帳の項目にします。
STEP 3
いちばん困っている表からつなげる
決済の進捗表など、書き写しが多く困っている業務から、台帳を参照する形に変えます。
STEP 4
元の表と突き合わせてから切り替える
取り込んだデータの件数や日付が元の表と合っているかを確かめてから、本番の運用に移ります。
STEP 5
使いながら、ほかの業務を足していく
重要事項調査、印紙、採用など、慣れてきたらほかの業務も台帳につなげていきます。
05注意したいこと
- ・台帳の項目を最初から増やしすぎない。共通して使う情報に絞る
- ・移行の前後で、件数・日付・金額などを必ず照合する
- ・誰がどの情報を見られるかを、役割ごとに決めておく(所有者さまの個人情報などを扱うため)
- ・作って終わりにせず、現場から出る「この欄がほしい」に対応し続ける
よくある質問
- Q.表計算ソフトのままでも、二重管理はなくせますか?
- A.表どうしを参照させる工夫である程度は減らせますが、表が増えるほど壊れやすくなります。複数の業務で同じ物件を扱うなら、台帳を中心にした業務システムに移すほうが、長く安定して使えます。
- Q.全部の業務を一度にシステムにする必要がありますか?
- A.ありません。困っている表ひとつから台帳につなげ、使いながら広げるほうが、現場の負担も少なく失敗しにくい進め方です。
- Q.今の表の書き方がバラバラでも移せますか?
- A.移せます。元の表記はそのまま残し、検索や照合のときにだけ書き方の違いを吸収する作りにすれば、現場の見慣れた表記のまま使えます。